静かに進む「言論統制」 ~裁判検証が出来ない~
小泉政権以降の刑事訴訟法および監獄法の改正について。冤罪の温床となっている密室での自白の強要や代用監獄を、長年続けている日本の司法制度。国連や海外メディアからも批判を浴びている中で、日本は裁判まで非公開にするつもりでしょうか。
裁判員制度の裏で改正された刑事訴訟法281条。裁判の証拠調査をマスコミや弁護士、ジャーナリストが行うことをほぼ不可能にする法改正です。後期高齢者医療と同様、小泉政権の置きみやげの1つと言えるでしょう。この法律はすでに施行されているいますが、殆ど報道されていません。
この法律は被告人側にのみ適用され、開示証拠などを入手した記者や弁護士、ジャーナリストも共同正犯(共犯)として処罰されます。当時の国会審議で、政府はこの改正の理由を「関係者のプライバシーを守るため」「利益目的等の悪質な行為以外は罰則は軽い」などと言っています。しかし重罪度判断の際、「事情を考慮する」と曖昧な表現が使われています。著作権法改正時に入った「情を知って」等と同様、その時々に応じて主観的な判断を可能にするものです。
被告人のプライバシーは勿論重要です。マスゴミによる報道被害も防ぐ必要があるでしょう。しかし被告人や弁護士まで実刑を含む罰則を付けて、全てを規制する必要があるのでしょうか?
Youtubeのビデオは、以前どなたかがアップロードされていたのものです。削除されていたため、こちらで保存していたものをそのまま再掲載しました。ビデオは5分割で、合計約24分です。
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Part 1 のみ
改正内容
| 刑事訴訟法 第二百八十一条の二の次に次の四条を加える。第二百八十一条の三 弁護人は、検察官において被告事件の審理の準備のために閲覧又は謄写の機会を与えた証拠に係る複製等(複製その他証拠の全部又は一部をそのまま記録した物及び書面をいう。以下同じ。)を適正に管理し、その保管をみだりに他人にゆだねてはならない。第二百八十一条の四 被告人若しくは弁護人(第四百四十条に規定する弁護人を含む。)又はこれらであつた者は、検察官において被告事件の審理の準備のために閲覧又は謄写の機会を与えた証拠に係る複製等を、次に掲げる手続又はその準備に使用する目的以外の目的で、人に交付し、又は提示し、若しくは電気通信回線を通じて提供してはならない。
一 当該被告事件の審理その他の当該被告事件に係る裁判のための審理 二 当該被告事件に関する次に掲げる手続 イ 第一編第十六章の規定による費用の補償の手続 ○2 前項の規定に違反した場合の措置については、被告人の防御権を踏まえ、複製等の内容、行為の目的及び態様、関係人の名誉、その私生活又は業務の平穏を害されているかどうか、当該複製等に係る証拠が公判期日において取り調べられたものであるかどうか、その取調べの方法その他の事情を考慮するものとする。 第二百八十一条の五 被告人又は被告人であつた者が、検察官において被告事件の審理の準備のために閲覧又は謄写の機会を与えた証拠に係る複製等を、前条第一項各号に掲げる手続又はその準備に使用する目的以外の目的で、人に交付し、又は提示し、若しくは電気通信回線を通じて提供したときは、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。 ○2 弁護人(第四百四十条に規定する弁護人を含む。以下この項において同じ。)又は弁護人であつた者が、検察官において被告事件の審理の準備のために閲覧又は謄写の機会を与えた証拠に係る複製等を、対価として財産上の利益その他の利益を得る目的で、人に交付し、又は提示し、若しくは電気通信回線を通じて提供したときも、前項と同様とする。 |
補足-監獄法改正
約100年間改正されなかった監獄法がやっと2005年から2007年にかけて数回改正され、現在は「刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律」という法律(参考資料C-2)に一本化されています。この改正で、これまで法的根拠の無かった代用監獄を禁止するかと思いきや、なんと設置根拠が追加されました。つまり定義を作って現状を追認したに過ぎず、未決拘禁者を警察所で長期間拘留できる問題は変わっていません。新しい言葉の定義は以下の様になっています。
未決拘禁者とは、逮捕され、裁判が確定するまでの間、身柄を拘束されている人々のことです。例えば容疑者が何ヶ月も警察の留置所に拘束され自白を強要された」ときに、この被害者は「未決拘禁者」として「代用監獄」に拘束されていたことになります。つまり日本の取り調べの問題点は、未決拘禁者に対する処遇の問題なのです。(参考資料C-6)
日本は、拷問等禁止条約に基づく報告書の提出を5年間以上遅らせ、2007年に国連拷問禁止委員会から糾弾とも言える厳しい勧告(参考資料C-7、8)を受けたにも関わらず、まだ中途半端な法改正を続けています。拷問禁止委員会の日本に対する最終見解は以下のとおり。
・ 警察拘禁の期間を制限し、捜査と拘禁を完全分離する
・ 取調べの全過程の録音録画または弁護人の立ち会いを求める
・ 死刑の執行停止と死刑判決に対する必要的上訴制度を提案する
・ 難民認定についての独立審査機関の設立を求める
・ 刑務所の医療の独立、長期独居拘禁の改善を求める
・ 特別公務員暴行陵虐罪の内容を条約の拷問の定義に合わせる
・ 警察官に対する研修カリキュラムの公開を求める
日本の死刑が海外からも批判されているのは、人権派の死刑反対だけではなく、司法システムそのものが持つ問題が多すぎる為です。法務省は、代用監獄での自白強要は国際標準では単なる拷問であると、まず認めるべきです。
補足-取り調べ可視化の現状
「推定無罪」が無意味になっている日本では、取り調べの可視化が不可欠です。上記法案審議の際、民主党議員が連名で別の可視化の法案を提出しましたが、反対多数で否決されました。改正内容は、1)取り調べに弁護士立ち会いを許可 2)取り調べの録画・録音の義務化。民主党は2008年にも同様の法案を衆議院に提出していますが、閉会中審査となっており成立の見込みは今のところありません。法務省は現在、取り調べ可視化の試行を行っていますが、実現しても対象が検察庁のみ、しかも録画の任意の一部を開示するというもので全く不十分です。
ちなみに参考資料B-2の産経記事を書いた土本という人は、時々テレビに出て刑事事件についてコメントしてます。NHKの冤罪ドキュメンタリーの解説者として演した際、「可視化をすると冤罪が増える」と発言し、朝生「検察の正義とは」に 出演した時は何故かヒーロー気取りで手を挙げながら登場。可視化した場合の問題点を論じるには、国際的にも異常な日本の取り調べを前提にしなければ意味がありませんが、彼には伝わらないようです。
雑感
共謀罪法や人権擁護法案では、条約を拡大解釈して国民監視・言論統制の条文を忍び込ませ、一方で都合の悪い拷問禁止条約では報告書の提出を遅らせて逃げ回った挙げ句、裁判員法にまぎれて上記のような言論統制を行う。また裁判員制度で検察・警察が控訴できるのも問題で、これでは裁判員の意味がありません。政府に都合の悪いことは報道しないマスゴミ。手遅れになる前に、自民党+官僚+マスゴミの合体政権を破壊する必要があります。
参考資料
A.刑事訴訟法改正
- 議案審議経過情報
- 議案本文情報一覧
- 改正履歴(ページの末尾にあります)
- 平成16年法律第62号 刑事訴訟法等の一部を改正する法律
- 第159回国会 衆議院 法務委員会 第17号 平成16年4月21日
- 第159回国会 衆議院 法務委員会 第19号 平成16年4月23日 (罰則を弱めた修正案を委員会可決)
- 第159回国会 衆議院 本会議 第27号平成16年4月23日 (修正案を本会議で可決)
- 第159回国会 参議院 法務委員会 第18号 平成16年5月20日 (281条の四の二を追加した理由の確認)
- 第159回国会 参議院 本会議 第23号 平成16年5月21日 (参議院本会議で成立。賛成162,反対22)
B.取り調べの可視化)
- 取調べの可視化(録画・録音)の実現に向けて 日弁連 (海外の可視化の状況が分かります)
- 【正論】白鴎大学法科大学院院長・土本武司 取り調べの可視化に疑問 産経 (魚拓)
C.監獄法改正
- 刑事施設ニ於ケル刑事被告人ノ収容等ニ関スル法律 (旧監獄法、廃止)
- 刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律 (略称・刑事収容施設法、現行法)
- 平成18年法律第58号 刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律の一部を改正する法律 (改正点)
- 代用刑事施設問題―勾留被疑者の身柄はどこに置かれるべきか― (NDL ISSUE BRIEF)
- 施設及び被収容者等の処遇に関する法律と刑事訴訟法の一部改正を求める意見書 (日弁連)
- 「未決拘禁」問題を知っていますか? (日弁連)
- 国連拷問禁止委員会最終勧告(仮訳)
- 世界も驚く代用監獄-「代用監獄」と国連拷問禁止委員会勧告- (日弁連)