アフガン 伊藤和也さんの死と日本の報道
今月27日に、ペシャワール会の伊藤さんの遺体が発見された。日本の民間人の、アフガンでの最初の犠牲者である。この事件に関する日本のメディアの報道について。
- アフガン支援の必要性を強調 メルマガで福田首相
- 福田首相:メルマガで「強い怒り」 復興支援は揺るぎなし
- 伊藤さんの志「高く評価」=福田首相
- インド洋での給油活動は継続、政府方針変わらず(町村官房長官)
福田総理:「(紛争や貧困に苦しむ)地域や人たちに少しでも手を差しのべていくことが、伊藤さんの遺志にもこたえ、平和協力国家としての日本の役割でもあります」(メルマガより)
町村官房長官:「日本がテロとの戦いの戦列から脱落をすれば、国際社会の動きと反することになる」「尊い犠牲が出たが、テロとの戦いに積極的にコミットする重要性を多くの国民が感じたのではないか」
紛争や貧困に苦しむ人に手を捧げたいなら、何の軍事的プレゼンスも無い給油など辞めて、その予算を民間による復興支援に向けるべきだろう。町村さんも犠牲者を早々と世論操作に利用するなと言いたい。
日本のマスゴミ報道は、電話取材だけでタリバンの報道官や警察の言うことをいちいち鵜呑みにし、次々と断定的な報道をするという、惨憺たる状況だった。特に読売・毎日・共同などがこれに当たる。これらのマスゴミは英語版でも同様の報道を垂れ流していた。タリバンの報道官は、やってもいないことで犯行声明を出すこともある。また現地の警察は腐敗しているため、容疑者の証言も鵜呑みにはできない。
- アフガン邦人殺害:タリバン報道官、NGO復興事業否定 「支援中止求め拉致」(毎日)
- 「我々が撃った」伊藤さん殺害、容疑者認める(朝日)
- パキスタン人が発砲を供述 情報部関与とアフガン当局 (共同)
- 伊藤さん拉致、タリバンか (時事)
- アフガンでNGO邦人拉致 タリバン系の犯行か (東京)
- 伊藤さん、拉致数時間後死亡か=「足手まとい」とタリバン-遺体きょうカブールへ (時事)
- アフガン邦人拉致:伊藤さん遺体確認 頭に殴られた跡 タリバン、交戦中殺害か (毎日)
- アフガン拉致殺害:「タリバンが拉致命令」リーダーが供述 (毎日)
- 「パキスタン勢力が依頼」 伊藤さん拉致、140万円で (共同)
- 「殺害した」とタリバン 援助団体、全外国人が標的 (共同)
毎日も共同も、混乱させているのはお互い様だろう。
海外メディアではタリバンとの関連を示唆しているが、「武装した人間に連れ去られた後、銃で撃たれた死体で発見された。治安部隊との戦闘に巻き込まれた可能性もある。」といった程度以上のことは報道していない。8月22日米軍の攻撃によって76~95人の村民(うち50人以上は子供)が死亡した事件に続き、昨日NATOの攻撃で子供が死んだニュースが大きく報道されており、今は伊藤さんに関する海外での報道は読売と毎日くらいである。(毎日新聞の英語記事は、2日ほどで削除されるようだが、こんな無責任な英語新聞を誰が読むのだろうか。)
- アフガンで拉致殺害の伊藤さん 弾が左大腿部の動脈切断で失血死(2008年9月1日)(魚拓)
- 以下の2記事は、9月5日追加
- 邦人スタッフ帰国 正式決定 ペシャワール会 伊藤さんの碑建立へ(2008年9月3日)(魚拓)
- NGO中村医師がアフガンへ出発(2008年9月4日)(魚拓)
伊藤さんを撃ったのがただの強盗か、タリバンか、治安部隊(警察含む)なのかは分からない。住人とのトラブルという説もある。分かっているのは、誘拐されて死体で見つかり、大腿部の動脈に銃による致命傷があるということだけだ。検死によれば離れた位置から撃たれたとのことだが、真相を明らかにするのは困難であろう。
あとがき
伊藤さんの死の責任を、自衛隊や日本政府と直接結びつけるつもりはない。根本的な問題として、閣僚から警察まで腐敗しきったアフガン政府がある。国土が荒廃し、麻薬が蔓延し、国民どうしが殺し合い、外国軍の攻撃で人々が毎日の様に死に、治安は悪化する一方だ。容疑者として逮捕された24歳の若者も、「戦争しか知らない世代」だ。こんな想像も出来ないような国に手をさしのべることがどれだけ困難か、改めて考えさせられる。政府は、初めて日本の民間人の犠牲者が出たことを、重く見るべきだろう。
町村さんが言うような、「犠牲者が出たから給油を延長すべき」は、実にばかげた理屈だ。テロ特措法の実目的はイージス艦派遣であり、国民に対するカムフラージュのために給油活動を行っているに過ぎない。シーレーンを守るなどというのは、後付けの方便である。支持率にさえ影響しなければ、給油だろうが輸送だろうが護衛だろうが、何でも構わないのだ。米軍のためにイージス艦を出せればいいと正直に国民に言えばいいのである。産経がまたトンチンカンな記事を書いてるが、テロ特措法については、また日を改めて書きたいと思う。